平成17年8月に国会へ提出し、廃案になった、私どもが「部落解放同盟国有化法案」と揶揄する「人権侵害救済法案」を、再度、国会へ提出するのではないかと危機感を持ち、「部落解放同盟国有化法案」にならぬよう3点の修正を求めて奔走した結果、法務省の政務三役名で、平成22年6月に「新たな人権救済機関の設置について」の中間報告が出され、平成23年8月には基本方針が出され、そして、12月には「人権委員会の設置等に関する検討中の法案の概要」が公表され、今年に入り、「人権委員会設置法案」(仮称)の骨子(案)が策定され、法案の国会への提出は秒読みになっている。
この「人権委員会設置法案」(仮称)の骨子(案)では、私どもが修正を求めた3点について、すべてを取り入れたことから、私どもが成立を求めた「人権擁護法案」に匹敵するものになっている。法案の骨子(案)ができているということは、既に法案が策定されていると思われることから、早期に法案が国会へ提出され、成立されるよう、自由同和会の総力を挙げ、渾身の力を傾注するものである。
また、障がい者の人権確立については、国連が平成18年12月に「障がい者権利条約」を採択し、日本も平成19年9月に署名を行っており、平成26年末までの締結に向け条件整備を進めているが、平成16年6月の改正に続き、昨年7月に「障がい者基本法」の改正案が成立し、8月に公布・施行された。その改正では、障がい者の定義が見直され、発達障がいや難病及び慢性疾患なども加えられるとともに、新たに「差別の禁止」も条文に明記された。そして、ノーマライゼーション(共生社会)の観点からインクルーシブ教育(特定の個人・集団を排除せず学習活動への参加を平等に保障する)も、明確に位置づけられたことで、地域の学校へ就学し易くなる。
平成24年度までの「障がい者基本計画」の策定については、市町村も平成19年4月からは義務化になり、ほとんどの自治体で策定されたが、その計画を推進する部局を横断する推進体制の設置については、平成22年3月末で都道府県70.2%、指定都市で55.6%、市町村では28.3%、になっている。推進体制が整備されなければ計画倒れになることが予想されることから、推進体制の整備と計画の実施を都道府県と市町村に求めていき、共生社会を目指す。
なお、この「障がい者基本法」の改正に先立つ6月には、「障がい者虐待の防止、障がい者の養護者に対する支援等に関する法律」が成立し、本年の10月から施行されるが、虐待行為者の範囲を、養護者と障がい者福祉施設の従事者及び障がい者を雇用する事業主としており、あまりにも限定的で不十分なため、虐待の温床になっている病院や学校を加えるよう政府に働きかけるとともに、都道府県では「障がい者権利擁護センター」を、市町村では「障がい者虐待防止センター」の設置が定められているので、前記の「障がい者基本計画」を推進する、関係部局を横断する推進体制の整備と併せて、その設置を都道府県と市町村に働きかける。
また、平成23年6月現在での障がい者の雇用については、法定雇用率2.1%が適用される国、都道府県、市町村では、国は雇用障がい者数6,869人で2.24%、都道府県は雇用障がい者数7,805人で2.39%、市町村は2万3,363人で2.23%になっており、法定雇用率2.0%が適用される都道府県教育委員会の雇用障がい者数は1万2,154人で1.77%になっている。一方、民間企業の場合は、従業者56名以上が対象で法定雇用率は1.8%が適用されるが、雇用障がい者数は36万6,199人で1.65%になり、法定雇用率を達成している企業の割合は45.3%でしかなく、一層の障がい者の雇用促進を企業に要請していく。一方、女性の人権については、平成13年10月から施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV法)によって、平成14年4月からは「配偶者暴力相談支援センター」が各都道府県に設置され、業務を開始しており、平成19年7月の改正により、市町村にも配偶者暴力相談支援センターの設置が努力義務となったが、ほとんどの市町村は設置していないことから、その設置を市町村に求めていく。(平成23年1月現在、全国193施設で、その内市町村が設置する施設は22施設)なお、この支援センターへの相談件数は年々増加しており、平成21年度は7万2,792件で、平成22年に警察が対応したものでも3万3,852件になっている。
また、これまで身体に対する暴力を受けたものに限り、保護命令を申し立てることができたのに対して、平成20年1月からは命・身体に対する脅迫を受けた者についても、身体に対する暴力によりその生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、保護命令を発することができることとなったほか、被害者への接近禁止命令の実効性を確保するため、接近禁止命令の発令されている間について、被害者の親族等への接近禁止命令も発することとされ、さらに、被害者への面会の要求や無言・夜間の電話等を禁止する電話等禁止命令も新設されたことで、平成22年では3,095件の申し立てがされ、2,434件について保護命令が発令された。よって、少しでも危害を受ける可能性がある場合は、積極的に保護命令を活用していく。今後もDV被害者の増加が予想されるが、緊急な避難場所としてのシェルター(一時避難所)が不足しているので早急に設置するよう市町村に求めていく。
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