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はじめに
 

  昨年の通常国会では「人権擁護法案」を国会へ提出するため、自民党内の手続きを始め修正に修正を重ねたが、拉致議連や日本会議の議員を中心にする「人権擁護法案」反対派の時間稼ぎで、法案を国会へ提出する前に、郵政民営化関連法案が否決されたことから衆議院が解散になり、成立することなく断腸の思いであったが、その後の衆議院議員選挙での自民党のマニフェスト(政権公約)に、「簡易・迅速・柔軟な救済を行う人権救済制度の確立。差別や虐待の被害者等人権を自から守ることが困難な状況にある人々を、簡易・迅速な手続で、積極的かつ柔軟に救済する人権救済制度の導入を目指す」という項目が記載された。

これは「人権擁護法案」の成立を意味しているものであるが、反対派のことを考慮して「人権擁護法案」と明記しなかっただけのことであり、これで自民党が党として正式に約束したことになる。
 

また、今国会の小泉・総理の所信表明に対する各党代表質では、前原・民主党代表の「人権侵害の救済をどう考えているのか」との質問に、小泉・総理は「政府・与党でさらに検討し、人権擁護法案を早期に国会へ提出できるよう努める」と答弁しており、杉浦・法務大臣も今国会の第1回(2月14日)の衆議員法務委員会で「人権侵害被害者の実効的な救済を図ることなどを目的とする人権擁護法案については、できるだけ早期に提出できるよう努めてまいります」と述べている。これらを踏まえるならば「人権擁護法案」を成立させる環境は整いつつあると思われるが、未だに自民党内には根強い反対派が存在することから楽観視は許されないが成立のためなら大胆な法案修正にも厭わずに党内手続きを突破し、同和問題の完全解決には必要不可欠な「人権擁護法案」を次期通常国会で成立させ、一刻も早く人権侵害である差別や虐待をなくしていく。

  来年が、「人権擁護法案」の成立の可否を決する重大な局面になるので、悔いを残さないよう最大限の取り組みを行う。

  その他として、男女共同参画社会基本法により、都道府県には国と同様に男女共同参画社会を促進するための基本計画の策定が義務付けられているため、すべての都道府県で策定されているが、市町村については基本計画の策定は努力義務になっているため、大阪府の93%を最高に、徳島県の11.4%がもっとも低く、全体では39.6%の957市町村(平成17年4月1日現在)と策定している市町村がまだまだ少ないので、策定していない市町村に基本計画の策定を求めていく。

  また、障害者基本法が平成16年6月に改正され、障害者計画が都道府県は努力義務から義務に、平成19年4月からは市町村も障害者計画が義務付けられるので、策定していない市町村については、国の市町村障害者計画策定アドバイザー派遣事業を活用しながら、数値目標を掲げた基本計画の策定を求めていく。

1. 住環境整備
   住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者や障害者が自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーを中心にする「人権のまちづくり」を視野に入れた取り組みをも展開し、ノーマライゼーションを達成する。

  地域の拠点になる隣保館については、バリアフリー化への改修費補助があるので積極的に活用していく。

  バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。

  建築物のバリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)が平成15年に改正され、特定建築物の範囲が拡大されたので、この「ハートビル法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。(「ハートビル法」では、地方公共団体や国庫からの補助がある)

  老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、定期借地権なども考慮しつつ、払い下げも視野に入れ検討し、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。

  また、政府の三位一体の改革から、地域の拠点である隣保館の運営費や施設整備費も削減されていく可能性も否定できないことから、隣保館の同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に果たす役割の大きさを訴え、削減ではなく、拡充を厚生労働省に求めていくとともに、地方公共団体へも隣保館の活性化を求めていく。

2. 産業基盤の確立と就労対策
   経済状況が低迷するなか、勝ち組・負け組みと言われるように一層の弱肉強食が社会全体で進んでいる。同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係業者が極めて多いという特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくこのような状況で産業基盤を確立することは非常に困難であるが、雇用の確保との関連性もあるので持続して発展していく必要がある。

  そのために、自営業者には政府が中小・零細業者向けセーフティネットとして実施している各種融資制度の有効活用を図っていく。

  未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。

  また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。特に、世界でも類のない高齢化社会に進んでいるため、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、非常に求人の需要が高いので資格の取得を奨励していくとともに、同和地区に多数現存する土木・建築業者については、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。

  農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットなどを活用して販路の拡大を図る。

  なお、一昨年に導入された「指定管理者制度」では、本年の9月までに、すべての公共施設を指定管理者に、施設の管理をさせることになっていることから、隣保館などが対象になるので、各都府県本部で設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用の促進ができるよう、都道府県・市町村と協議する。

  いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。

  また、就職差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深めていくと同時に、障害者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が56人以上の民間企業は1.8%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。

3.教育・啓発
   教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、基本計画も策定実施されているので、この法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を強く求めていく。

  また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業員を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には、推進員の設置を求めていく。

  奨学資金を扱う日本育英会の独立行政法人化で、名称が日本学生支援機構になり、大学はそのまま日本学生支援機構が取り扱い、高等学校の奨学資金は都道府県に移管された。私どもの運動で創設された奨学資金は学力要件がなく誰もが貸与される制度であったが、残念ではあるが三位一体の改革から廃止になった。廃止に当たっては学力要件を撤廃するよう都道府県を指導するように要請していたが、学力要件が残っていることも考えられるので、残っている場合には持ち出さないよう都道府県に要請していくとともに、これを機会に専門学校については対象外になっているので、対象に加えるよう要請していく。

  また、すべての学校がバリアフリー化され、車イスでも通学できるよう、文部科学省にバリアフリーの促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の差別言動が少なからず発生していることから、教師に対する人権研修の徹底をも求めていく。

  今後、小・中学校では、地域に開かれた学校を目指すとして、学校評議員制度など保護者が学校運営に直接関与できるようになるので、積極的に関与していく。

  今年1月に「人権教育の指導方法の在り方について」(第2次とりまとめ)が文部科学省でまとめられ、各学校に配布されていることから、その実施を求めていく。

  特に、カリュキュラムには、最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。

4.権侵害の処理及び被害者の救済
   人権侵害の処理及び被害者の救済については、私ども自由同和会が求めていた、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を含む「人権擁護法案」が必要不可欠であるので、再出発を図り、是が非でも成立を図らなければならない。

  「人権委員会」が創設されるまでは、一昨年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規程」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないという強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規程」を有効に活用して救済を図っていく。


最後に
 
  「人権擁護法案」を審議する自民党の法務部会と人権問題等調査会で数多く出された同和団体アレルギー発言は、運動団体が反省することも必要だが、差別がなければ確認・糾弾の必要がないことも確かであり、確認・糾弾の結果だけが論じられているが、差別が社会悪だと広く社会に根付かせ被害者を救済するため、これまで確認・糾弾が果たした役割は大きなものがあったことも事実である。

  最近になって、新たな地名総鑑が発見されているし、インターネットの掲示板は差別のし放題である。このまま人権侵害の処理と被害者の救済を簡易・迅速に行っていく法律による機関ができなければ、差別された痛みを理解してもらうため、また、以前の激しい確認・糾弾をやらざるを得ず、悪循環に陥ることになり、お互いが不幸のままで悲しいことになるが、一日も早く差別をなくし、住みよい社会を築くため、法律ができないのであれば条例をも検討していく。


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