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はじめに
 

  「人権擁護法案」の国会への上程を目前に、思わぬ伏兵により暗礁に乗り上げたが、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の創設は、私ども自由同和会の結成からの悲願であり、手を拱いていることは許されない。

  一刻も早く人権侵害である差別をなくすには、「人権擁護法」は必要不可欠であるので、成立を図るためには大胆な修正も厭わないが、反対のための反対で「人権擁護法案」を廃案にしようと企てている勢力があるとするならば、絶対に許すことはできず、断固、組織の総力を挙げてあらゆる手段をもって闘うものである。

  しかし、平成17年9月29日に開催された参議院本会議で上程が見送られていた「人権擁護法案」に関し小泉首相が、来年の通常国会で上程し「人権擁護法案の早期成立に努力する」と述べ、早期成立に向けて大きく前進した。自由同和会の結成以来悲願とされていた「人権擁護法案」成立に向けて闘っていくものである。

 来年度が、「人権擁護法案」の成立の可否を決する重大な局面になるので、悔いを残さないよう最大限の取り組みを行います。
 
  その他として、男女共同参画社会基本法により、都道府県には国と同様に男女共同参画社会を促進するため、基本計画の策定が義務付けられているが、市町村については基本計画の策定は努力義務になっているため、30%弱と策定している市町村が少ないので、策定していない市町村に基本計画の策定を求めていく。
  また、障害者施設に関する長期計画を策定していない市町村についても、その策定を求めていく。

1. 住環境整備
   住環境整備については、近隣地域との差異がないかを点検しつつも、高齢者や障害者が自由に社会に参加できる活力ある地域にするため、バリアフリーを中心にする「人権のまちづくり」を視野に入れた取り組みを展開し、ノーマライゼーションを達成する。

  地域の拠点になる隣保館については、バリアフリー化への改修費補助があるので積極的に活用していく。
  バリアフリーの基準としては、介助がない車イスでどこへでも自由に、安心・安全・快適に移動できるものとする。

  建築物のバリアフリーについては、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律」(通称、ハートビル法)が平成15年に改正され、特定建築物の範囲が拡大されたので、この「ハートビル法」を積極的に活用してバリアフリーの建築物を増やしていく。(「ハートビル法」では、地方公共団体や国庫からの補助がある)

  老朽化した改良住宅・公営住宅の建替えを行う際については、定期借地権なども考慮しつつ、払い下げも視野に入れ検討し、これを機会に「人権のまちづくり」を具現化する総合計画の策定を市町村に求めていく。
  また、政府の三位一体の改革から、地域の拠点である隣保館の運営費や施設整備費も削減されていく可能性も否定できないことから、隣保館の同和問題をはじめとするあらゆる人権問題の解決に果たす役割の大きさを訴え、削減ではなく、拡充を厚生労働省に求めていくとともに、地方公共団体へも隣保館の活性化を求めていく。

2. 産業基盤の確立と就労対策
   経済状況が低迷するなか、勝ち組・負け組みと言われるように一層の弱肉強食が社会全体で進んでいる。同和関係事業者は零細で、かつ、建築・土木関係業者が極めて多いという、特定の業種に偏った特有性をもっているので、公共事業が年々減少していくような状況で産業基盤を確立することは非常に困難であるが、雇用の確保との関連性もあるので発展していく必要がある。
  そのために、自営業者には政府が中小・零細業者向けセーフティネットとして実施している各種融資制度の有効活用を図っていく。

  未就労者に関しては、ハローワークを最大限活用するとともに、規制の緩和により都道府県も就労の斡旋ができるようになったことと、現在様々な雇用対策が実施されているので都道府県と連携を図り、未就労をなくしていく。
  また、専門性を取得するために職業訓練や研修・講座などを有効活用し、就労を確保していく。特に、世界でも類のない高齢者社会に進んでいることから、介護福祉士やホームヘルパーが不足しているため、求人の需要が非常に高いので資格の取得を奨励していくとともに、同和地区に多数現存する土木・建築業者については、合理化や近代化を促進するとともに、生き残りのため共同化や協業化を進めていく。

  農林漁業者については、付加価値の高いものに移行するとともに、ブランド化を目指し、インターネットなどを活用して販路の拡大を図る。
  なお、一昨年に導入された「指定管理者制度」では、来年の9月までに、すべての公共施設を直営か指定管理者に、施設の管理をさせることになっていることから、隣保館などが対象になるので、各都府県本部が設置しているNPO法人の実情に合った公共施設の指定管理者になり、雇用の促進ができるよう、都道府県・市町村と協議する。

  いずれにしても、最新の情報を得るため中央本部は各省庁と、都府県本部は都府県と緊密な連携を図り、会員に最新の情報の伝達や相談を行うため、都府県本部内に相談業務を確立していく。
  また、就職差別をなくし、安定した雇用を確保するため、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深めていくと同時に、障害者の雇用をも促進するため、法定雇用率(常用労働者が56人以上の民間企業は1.8%)を下回る企業については、特に積極的に雇用するよう求めていくが、抜本的に就職差別をなくすため、ILO第111号条約の「雇用及び職業における差別に関する条約」を批准し、国内法を整備するよう厚生労働省に求めていく。

3.教育・啓発
   教育・啓発については、既に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されており、基本計画も策定実施されているので、この法律を有効活用し、すべての都道府県、すべての市町村に、この基本計画の策定と実施を求めていく。
  また、基本計画には企業の役割も明記されていることから、厚生労働省が100名以上の従業者を有する企業に設置を求めている「公正採用選考人権啓発推進員」との連携を深め、企業内の人権研修の充実に努めていくとともに、未設置の企業には推進員の設置を求めていく。

  奨学資金を扱う日本育英会の独立行政法人化で、高等学校の奨学資金は都道府県の裁量に委ねられる。私どもの運動で創設された奨学資金は、学力要件がなく、かつ、同和関係者だけではなく誰もが貸与される制度であったが、残念であるが三位一体の改革から廃止になった。廃止に当たっては、学力要件を撤廃するよう都道府県を指導するように要請していたが、財政の厳しい都道府県によっては学力要件が残っていることも考えられるので、残っている場合には撤廃するよう都道府県に要請していくとともに、専門学校については対象外になっているので、これを機会に対象に加えるよう要請していく。
  また、すべての学校がバリアフリー化され、車イスでも通学できるよう、文部科学省にバリアフリーの促進を求めていくと同時に、児童・生徒の人権を侵害する教師の差別言動が少なからず発生していることから、教師に対する人権研修の徹底をも求めていく。

  今後、小・中学校では、地域に開かれた学校を目指すとして、学校評議員制度など保護者が学校運営に直接関与できるようになるので、積極的に関与していく。特に、カリュキュラムには、最大限の関心を持ち、人権教育が計画的に実施されるよう働きかける。

4.権侵害の処理及び被害者の救済
   人権侵害の処理及び被害者の救済については、私ども自由同和会が求めていた、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を含む「人権擁護法案」が国会へ上程されたが、野党との合意ができないまま衆議院の解散から、審議未了で廃案になった。

  国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の創設は、私ども自由同和会を結成して以来の悲願であるので、再出発を図り、是が非でも成立を図らなくてはならない。

  「人権委員会」が創設されるまでは、昨年の3月に20年ぶりに改正された「人権侵犯事件調査処理規定」での対応になるが、差別での泣き寝入りは絶対にさせないという強い気持ちで、「人権侵犯事件調査処理規定」を有効に活用して救済を図っていく。

最後に
 
  「人権擁護法案」を審議する自民党の法務部会と人権問題等調査会の合同部会で数多く出された同和団体アレルギー発言は、運動団体が反省することも必要だが、差別がなければ確認・糾弾を行う必要がないことも確かであり、確認・糾弾の結果だけが論じられているが、結婚差別や就職差別で自殺した同和関係者と、確認・糾弾で自殺した数はどうであったのか問いたい。

  そこにはいずれも差別があったことを忘れている。
  このまま人権侵害の処理と被害者の救済を簡易・迅速に行っていく法律による機関ができなければ、差別された痛みを理解してもらうため、また、以前の激しい確認・糾弾をやらざるを得ず、悪循環に陥ることになり、お互いが不幸のままで悲しいことになるが、一日も早く差別をなくし、住みよい社会を築くため、法律ができないのであれば条例を検討していく。


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